intel独禁法違反勧告を利益構造の変遷から考える
題名の通りの勧告が出ている。決着予想はどうでもいいから、影響範囲をシミュレートしてみよう。
これまで
特筆すべきは、PC販売企業にとってintelと癒着するデメリットがなかったことだ。というのも、性能に基づくCPU選択というのは意外にナンセンスだからだ。CPU論議には、以下の背理がある。
intel:販促費とひきかえに認知度と売上を得る。ウマー。
AMD他:intelの販促費戦略の結果、シェア低下。マズー。
PC販売企業:intelに擦り寄ることで以下のメリット。ウマー。
・販促費がもらえる
・採用検討のための期間および費用が省ける
結局のところ、intelが販促費としてお金をくれるならば結果的にPC販売企業はPCの単価を落とせるわけだ。これはつまり、消費者が安くPCを買えることも意味している。
・採用するCPUによって世界のPC需要が変動するわけではない
・採用するCPUによって発生する変化で重要なのは価格であって、ベンチマークでしか分からない相対性能ではない
・採用ブランドの多様化はセールス、サポートの煩雑化を招くため人件費増加に直結する
だから実はintelの施策は消費者にも(短期的には)利益だった。これが長期的に実施され、競合他社が事業撤退にまで追い込まれてはじめて「独占による値段高騰」が発生し得ることになり、結果的な不利益として跳ね返る。
では、そうなるだろうか。少なくともTransmetaは撤退してしまったから、現実味がないわけではない。もっとも、Transmetaは広報が下手だったのでintelがいなくてもいずれ沈んだろうと思われるのだが、それは別の議論となるので割愛。
問題はAMDだ。AMDは確かに2004年第3四半期の売上を下方修正している。が、これは主にフラッシュメモリ市場そのものの減衰が原因で、同様の理由でintelも下方修正している。つまり直接的な原因がintelにあるわけではない。
むしろintelは2003年度のフラッシュメモリ市場で値段をつり上げて大失敗した。AMDの事業予測はそんなintelの愚行が故に発生した好景気を前提に作られていた(というか株式会社としてそうせざるを得なかった)わけだから、味方次第では無理もないのだ。むしろ回復できてないintelの方が心配だ。
私はユーザとしてintel派だから余計そう思うのかもしれないが、利用者にとってプラットフォームが複数あるというのは実は言うほど喜ばしいものではない。自作派その他の機械好きにとっては単一の選択肢はとても寂しいことは予想できるが、それだけのためにPCの価格が結果的につり上がっては話にならない。
無論、公取委がAMDの経営状況を危ぶんで今回の手を打ったのだとしたらそれは間違いなくお手柄だ。AMDがつぶれてしまってはintelは販促費も払わず、単価も下げずでふざけんな状態になるからだ。
yahoo BBはサービスとして糞と名高いが、日本のブロードバンド導入・維持費をそれまでより大幅に下げてくれたという実績がある。私はこちらを評価しているので、孫正義自体は別段嫌いではなかったりする。ソフトバンクおよびグループ企業そのものは決して好みではないが。特に癌砲と出版関連の態度。
閑話休題。
つまるところ、今後AMDがintelを牽制する上で今回の勧告が必要だったのならばそれは「よくやった」だ。だが、この勧告がPC販売企業がいっせいに販売価格を上げる公明正大な口実になってしまうのではないかという危惧もある。つまりintelが販促費を出してこそ成り立っていた市場の常識が崩れ、PC不況が一段と深まるのではないかということだ。
もともと家庭需要自体はすでに飽和しているといっても過言ではない。後は企業の置換え投資がメインであるPC市場にひとつの光をもたらすネタとなるかどうか。私は総合的に見てマイナスのような気がしてならない。だってintelが公明正大にお金くれなくなるんでしょ? だめじゃん。
最後に。私はPCベンダーに関わってはいません。信じるかどうかはお任せします。読者層に知人いるし…。