独身税が築く素晴らしい世界

少子化問題に関して、blog界がちょっとにぎわっている。せっかくだから便乗しよう。そういう気分だし。

今年は提灯記事よろしく、それでも経済ネタでは世の中の基準にされる日本経済新聞も「少子に挑む ニッポン大転換」と称した社説を連載し、記事も少子化に関連するネタが結構出ている。まぁ保険問題から少子化は切り離せないし、経済全体にとってマクロ的な大問題なのは今更語りなおすまでもないことだ。

で、上記社説の1月8日朝刊掲載紙面にこんな記述があったので紹介する。

昨年十二月、自民党の子育て小委員会。同党の公募議員第一号の柴山昌彦(衆議院議員、39)が発言した。
「暴論ではあるが独身税をやってはどうか」

これ自体に価値は無い。が、シミュレートすると実に面白いのだ。

独身税が導入されるとどうなるか。独身税はおそらく「一定年齢になっても結婚していない人に課す税」となるから、それまでに結婚しようという意識が必然的に働く。これは「結婚補助」という「結婚したらもらえる報酬」によって結婚しようとする人を増やすよりもずっと効果的だ。みんな税なんて払いたくないんだから。

だが、もちろん問題も出てくる。「結婚の形骸化」だ。つまり税逃れのために書面上だけ結婚するというパターンが出てくるということだ。でも実はこれ、あまり問題にならない。結婚という概念が今よりもうちょっとだけネガティブになるだけだ。

というのも、Simpleでもよく揶揄される点だが「結婚は幸せ」ではないからだ。もともと結婚は「社会所属する人間が本来なら踏んでおくべき通過点」扱いだ。結婚の先には当然のように出産が期待されるのだから、この点に言い訳の余地は無い。結婚が「人生のパートナーとの巡り合い」なんてのは幻想で、その幻想に染まれる人間がいたとしたらその人が幸せなだけであって、それは万人共通の「結婚像」ではない。

だから、独身税の導入は結婚という社会儀礼自体は壊さない。だが残念ながら、少子化を防ぐ施策にもなりえない。だって結婚しても子ども産まないなんてザラだし。もし防ぎたいなら「無子税」でも作らなければならないだろう。でもこれはさすがに通らないだろう。日本はすでにそういう社会だ。

選挙は大衆の意思決定だ。結婚を必ずしも前向きに考えず、子育てなんてもっと大変だという感覚が当たり前になってしまった今の日本。これを政策レベルで是正することは、実はできない。だって国民にそっぽ向かれて終わりだもん。だが、逆にいえば今仕掛けておかなければならないのも事実だ。団塊の世代が寿命を迎える前に、投票で大多数を占められる間に「将来の日本のために、今の若者に人柱になってもらうための法律」を策定しておかなければ、少子化へのブレーキはかけられないだろう。

もう既に手遅れとかそういう真理で一刀両断するのはこの場においてはタブーね。一応、これネタなんで。

閑話休題。一方で、独身税は女性をより媚びた存在にする。

日本国民の割合は男の方が多い。これは単純に考えると男が女に媚びないと男は相手にしてもらえないと思うだろう。無論、これは世の中に経済概念がなければまかり通る真理だ。

だが、独身税が入ると話が違う。税というものは収入格差をつけることはできても、性別差をつけることができないからだ。そして、高所得者は税が高くても愚痴と共にそれを自慢するネタにする程度で、根本的なダメージにならない。つまり独身税が痛いのは低所得者ということになる。

さて考えてみよう。独身税が適応される年齢が30歳〜35歳から始まるとして、独身税が課税されて一番困るのは誰だろう? 答えは簡単、「負け組」になった女性たちだ。

無論、税で死ぬほど搾られることは今の日本で考えにくい。だから「負け組」にとっても単に愚痴のネタが増えるだけになるというオチは十分に予想できる。だが、自分の意志でキャリアウーマンやっててその代償として支払うのと、結果的に「負け組」になって支払うのとでは本人にとっての意味が全然違う。女のつまらないプライドという奴が絶対に許さないだろう。

結果、どうなるか? 答えは簡単、税が適用される年齢になる前に、何としてでも相手を見つけようとするだけだ。

この傾向は、ふつーに生きてれば働いてる可能性が(それなりに)高い男性より、基本的に退職するものとされている女性のほうが圧倒的に強いだろう。この発言は男女雇用機会均等法に抵触するとか差別意識だとか叫ぶ前に現実を見ような。まあ男だらか働くという概念自体にも勿論疑問はあるのだが、ここで織り交ぜると崩壊するので割り切って語る。目的意識は明確に。

つまり、男にとっては「結婚するなら税が適用される前のがいいよなー」程度だが、女性にとっては「何としても税が適用される前に結婚しないと!」となるのだ。離婚後ならともかく、未婚のまま税が一瞬でも適用された過去を持った時点でその女性は「負け組」であり、一生拭えないレッテルとなる。

そして、女性は今以上に「負け組」にならないために血眼になるわけだ。素晴らしい。なんて殺伐とした世の中だろう。利権獲得、汚点回避のための人生戦略。人間の優しさとか愛なんて欠片も考慮しなくていい世界が、またひとつ明確に示されるわけだ。

私は独身税に賛成です。ちゃんと独身やって、税金も払いますから適用してください。