いじめに必要なキーワード

Simpleが新しいネタを持ってきてくれたわけだが、今回は正直面白くない。私の趣味と違うからだ。いやもちろん、そんなことはどうでもいいのだが……。

Simpleでも取り上げていたYahoo!の記事によると、「テレビ番組で紹介された血液型別のレッテルによって子どもがいじめられた」みたいな話があるわけだが、重要なのは「テレビ番組が紹介したレッテルがいじめの手段になる」という事実そのものだろう。

「いじめ」とは、いじめる側にとっての自己存在確認だ。「俺は他のみんなよりすごいんだ」という優越感と「俺はみんなと一緒なんだ」という所属の欲求を同時に満たす方法として、「いじめる側」という大衆に所属しながら「いじめられる側」という弱者を虐げる。

もうひとつ言えば、「いじめは悪いこと」と知っていながらも「それができる自分はスゴい存在なんだ」という「背徳感への勝利」という自己陶酔が出来るという側面もある。

さらに言えば、「いじめられる側がドジでノロマでクズだから悪いんだ」という責任のなすりつけを行うという「都合の悪いことがあったら他人のせいにしないと自分を守れない弱さを持っている」証明でもあったりする。無論、本人はすべて無自覚な訳だが。

つまりテレビ番組に代表される「マスメディア」が紹介する内容は、多数派にとって「テレビ番組が紹介した内容を持ち出すことによってみんなとの共感が得られる」格好の口実になるわけだ。それが少数派にとっては「自分たちが虐げられる原因となる偏見を生み出す害悪」として映るに過ぎない。偶然か意図的か、Yahoo!の記事でも偏見を持たれている血液型はB型とAB型、つまり少数派だ。(血液型の割合はA>O>B>ABの順に多い)

では何故こうした番組が成り立ち、そしてベスト100に6番組も入るほど一定以上の視聴率を得ているのだろう? 理由は簡単、多数派が少数派を虐げる「口実」、つまり弱者が弱者として扱われるための「キーワード」を求めているからだ。

例えば無根拠に「お前は俺より下」と相手に言い放っても「根拠は何だ!」と言い返されては、実際の力関係によっては喧嘩を売ったほうが返り討ちに合うかもしれない。しかしテレビ番組で紹介されていた内容を元に「あいつAB型なんだぜ、二重人格だ!」と多数のA型やO型と一緒になって叩きのめせば、数の暴力で勝つことが出来る。仮に反撃を受けたとしても「あいつ生意気だよな」と、「多数派の集団意識」に乗っ取った「所属の欲求」を満たすことが出来る。

冷静に分析すれば病的なこれらの行動は、実は人間としては非常に正常な欲求によって支えられている。だとすれば、間違っているのは「いじめはいけない」という理想だろうか。それとも「欲求に従っていじめる」多くの人間たちだろうか。